深田久弥終焉の地 「茅ヶ岳」
その 理髪店に行き出してずいぶんになる。
いつものとおりでお願いします、というと調髪と同時に山の話が始まる。
マスターも山が趣味なのだ。
といっても彼の場合はあちこちは登らない。
この節は登る山が決まっていて、山頂で肉を焼いたり、ご飯を炊いたり。
下りてきてからは、中腹の茶屋で一ぱいやるというパターン。
これを天候に関係なく週一でしている。
休みの日にはDIY。
職人さんだけあって、手先が器用なのだ。
空き缶でアルコールストーブをつくって、それが売り物のような仕上がりだ。
売れそうですね、と返したら
うれしかったのか1つ頂戴してしまった。
山の楽しみ方は人それぞれだ。
自分の場合は、彼とは違って山ごはんや山道具にはあんまり興味がない。
登ってない山へ行きたい、歩いていない道を歩きたい、という
説明できない何かに突き動かされて山行している。
茅ヶ岳の山行は、この理髪店の待合にあった本がきっかけだ。
彼は、この山中で亡くなった。(1971年)
特段の意図はない。
どんな山か、登ってみようと思って出かけた。
以下、2021年11月4日の記録より
〇アクセス
韮崎ICより昇仙峡グリーンライン(27号線)を北上する。
Pが左側にある。
〇コース(左周りの周回ルート)
深田記念公園 → 茅ヶ岳(1704m) → 金ヶ岳(1764m) → 林道歩き → P
〇感想
山行を始めて1時間、女岩着。
巨岩が積みあがったような岩壁を上がり、それからはずっと急登。
下りよりも登りが好きといっても、
相当のきつさに息が荒くなってきて いつまで続くのかと思う頃、
ぱたりと鞍部に出て石柱が立っている。
深田久弥、終焉の地。
事前に読んでいたことが思い出されてくる。
脳卒中による急死とのことだ。
行動中、体の異変を本人は感じていたはずだ。
そんな中、ここまで登ってきてぐらりと倒れてしまった。
心中いかばかりだったろう。
一緒に登っていた人たちのそのときの様子がちらと浮かび、
はからずも手を合わせ頭を垂れていた。
茅ヶ岳山頂(1704m)で一休み。
シルバーの円筒状のものは、「山座同定盤」というらしい。
快晴で、しかも無風。
こんなに良好な気象状況はあまりないのではないか。ラッキー
北に八ヶ岳、南には富士山。
西に目をやれば甲斐駒ヶ岳の南アルプス、中央アルプスの白い頭も。
草木があるのでちょっと背伸びして写真を撮る。
すぐ出発。
金ヶ岳(1764m)へは100mほど下りて登り返す。
ここまで足を延ばす人は多くはなさそうだ。
後から来る人がいない。
下山は、急登の逆。
1時間ちょっで林道に下り立つ。
ここからのロードがまた長く、ピストンでもよかったかなと思う。
午前7時から登り始め、午後2時前にはトレッキングを終えた。